ハイソラ

「断れない」あなたに、この記事を送ります

WORK
断る力

フリーランスで仕事を続けていくと、ビジネス上で「断る」場面に多く出くわします。
先日の記事でも、モンスタークライアントに出会ってしまい、ある程度時間がかかったのに結局断ることになってしまった事例をご紹介しました。
もちろんフリーランスでなくとも断る場面というのは多々ありますが、部署が分かれている会社とは異なりクライアントに直接言う必要があったり、そもそも組織とは違い「断ることができる場面」が多いのです。
そして、断るという行動は想像以上にエネルギーを使います。

断ることに慣れるべき

なぜエネルギーを使い、体力を奪われるのか考えてみると、単に「慣れていないから」なのです。
断ることに慣れるためには、単に断る回数を増やせばいいだけのことです。
飲み会の誘いをお断りしたり、ランチを「ちょっと仕事があるんで」と断ることに対して、そんなに体力を使うことはありませんよね。
少なからずエネルギーを使うわけですが、そこまでではないのは「結構経験がある」からです。

もちろん、相手に迷惑をかけて良いと言っているのではありません。
自分が我慢を強いられていても、「相手に悪いから」という理由だけで断らない姿勢は改めるべきです。

断ることに対する心配は、そんなに心配しなくていい

断る際に「嫌われないだろうか」と心配になることがあります。
確かに、意味なく仲のいい友達や知人からの誘いを断り続けると、「なんだあいつ」となりかねません。
しかし明確な理由がある場合は別ですし、そもそもビジネスの場面だと、一箇所から何度も依頼を受け続けることは滅多にありません。
二、三度続けて断ったら、お声がけがなくなる可能性が高い。
シビアですが、そもそも断る明確な理由があるのですから、嫌われてもいいではありませんか。

断ることでトラブルになることも、もしかすると、あるかもしれません。
そのために、「断りたい」と思ったら我慢せずに、出来るだけ早急に相談することが大切です。
風邪や体調と一緒で、「おかしいな」と思ったらすぐに何かしらの手段を講じるのです。
ズルズルと長引き、相手の不利益になってしまうのは良くありません。

またイライラして怒りのままに伝えるのではなく、あくまでも低姿勢に行くべき。
自分から一方的に断ることは事実なのですから、そこで高圧的になってはいけません。
もちろん契約書で自分の身を守ることも大切ですが、そういったソフトの面でも自分を守っていきましょう。

断ることで、いいサイクルが生まれる

断ることで「仕事がなくなる」という心配があります。
「あー、もうこの仕事断りたい…、でも次の仕事あるかな…」という心配です。
確かに、その案件が30万円だったとして、その収入分は無くなります。
最初の方は、かなり痛手にになります。

しかし、断ることに慣れてきて「こういう仕事がしたい」「こういう相手と仕事がしたい」ということが明確になってくると、受ける仕事に対して、実力以上の能力を発揮することができるようになります。
「こういう環境で仕事ができて幸せだな」と、仕事に対して労役という感情とは正反対の感情が生まれることさえあります。
そのような仕事は、大抵、色々な人から評価をいただけます。
もちろんクライアントからも、そのサービスや製品を使った人からも、仲のいい人からも、全方位的に評価を受けるようになります。
すると、その結果を見た人から別の依頼を受けたり、別の道が開けたりするのです。
もちろん、その依頼については、また吟味をする必要がありますが、依頼が増えるにつれ審美眼が磨かれ、より良い仕事に出会うという、いいサイクルを回していくことができます。
これが、断ることの大切さであり、パワーなのです。

かれこれフリーランスになってから8年なのですが、いまだに断ることに対する恐怖心は無くなっていません。
ようやく薄くなってきた感覚がありますが、まだまだ悩みは尽きません。
しかし、断らずに無理やり仕事を続けても、その報酬以上の価値が生まれたことはありません。
これについては断言できます。
むしろ、あまりに理不尽な要求をされて報酬以上の労力がかかったり、自信を根こそぎ持っていくような言われ方をしたり、イライラして関係のない人に当たったり愚痴ったりしてしまうなど、自分にとって全くプラスにならない。

断ることに対して妙に厳しい人は無視

物事を断ったり、途中でやめるという選択肢に対して、妙に厳しい人を見かけます。
「根性がない」「だらしがない」だとか、「だからいつまでたっても出世しない」とまで言う人もいます。
確かに日和見で、嫌なことから逃げ続け、いつか良いことが起きると信じて、転々とするのはスキルの形成や経験の蓄積が難しくなります。
私も最初の方は「確かにそうかもしれないな」と考えていましたが、断るべき案件や断るべき場面で無理をしてそのまま進行をしても、誰のためにもならないことに気が付いてからは、まさしく「馬耳東風」状態になりました。

炎上した案件に参加したデザイナーから、「最後まで職務を遂行し、その結果をもって相手に改善点を伝えるべき」と伺ったこともあります。
私は冷たい性格なのか、「改善点を伝えて直るような相手だったら、そもそも炎上しないのでは」と思ってしまいます。
おそらく、自分勝手に満足をして、次もまた同じような炎上案件を作り出すのではないでしょうか。

中には、「無理やりハードルを作ってあげて、それを超えることでよりいい仕事をして欲しい」という、お願いもしていないのに勝手な面倒をかけてくる謎なクライアントもいます(直接3人から言われたことがあります)。
かなり年下ですから、このようなことを言ってきたのかもしれませんが、一方的に勝手に作られたハードルを私が超えることで、どういう能力が生まれるのか理解に苦しみますが、世の中にはそのような人もいるのです。

「断る」「断らない」の基準をもつ

そもそも、どのような場合に断るべきなのか、分からない人も多いと思います。
そのためには、金銭が発生しない様々なプロジェクトを経験しておくといい。
学生時代から参加をしたり、ある程度フリーランスを本業にする前に様々な経験をしておき、「こういう人とは仕事がうまくできないな」「こういう仕事は妙に褒められるな」という物差し、価値基準を作っておくことをお勧めします。

繰り返しになりますが、自分勝手に、相手の迷惑になる「断り」を勧めているのではありません。
納品間近で、相手の不利益にもなってしまう時期の断りや、明確な理由なく単に面倒だから断る、などの姿勢は駄目。
自分のためにもなり、相手の不利益にならないような「断り方」を早期に身につけましょう。
私は8年かかって、ようやくその大切さに気づくことができました。

実はまだ読んだことはないのですが、巷には「断り」本がかなりあります。
私も早く読んでおけばよかった。