以前、「スタートアップ企業はデザイナーを大切にするべき」という記事を投稿しました。
投稿したのはいいのですが、もっと、ハッキリと、いい言葉で表現することはできないかと悩んでいました。
そして、今回ご紹介する本に、すべて書かれていました。
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」~』(光文社新書、山口周 著)です。
本当におすすめします、全デザイナー必読ですね。
目次
論理的思考のコモディティ化でコンプライアンス違反が起きる
この本は、「絵画からインスピレーションを得て経営に生かそう!教養大切!」という類の本ではありません。
まず、著者の山口周氏は、ビジネスパーソンの多くが、論理的思考や分析的な考え方をある程度のレベルまで知ったことで、「論理的思考のコモディティ化」が起きているといいます。
そうなると、過度に「サイエンス」が経営で重視されるようになります。
企業の経営が悪化したり、成長が鈍化すると、現状を打破すべく、より高みに数値目標が置かれますが、根本のところは全く変わっていないので、結局現場が今以上にハードワークを課さられて、疲弊するだけ。
無茶な明確な目標が置かれれた現場は、より仕事をしているように見せたり、その目標に少しでも近づこうとしたり、「儲かってさえいればOK」という意識になり、コンプライアンス違反をしたり、ブラック企業になってしまう、というわけです。
サイエンスだけで経営が済むはずがない
本書にも書かれていますが、会社は人間が集まっているものです。
人間は血が通っていて、気持ちがあります。
すべてを論理的に行動できるはずがありませんよね。
その会社経営を、サイエンスだけで行えるわけがありません。
データを分析し、それに基づいて論理的に経営を行うのであれば、それこそAIに任せるべきで、人間がする必要はないのです。
立案した戦略がうまくいかず、批判を浴びた場合に論理的に言い訳(反論)できればいいという考え方がありますが、それはリーダーシップの放棄であると、著者は指摘します。
まさしくその通りですよね。
iMacやウォークマンなど、世界を変えた発明は、論理的に考えると絶対に失敗する、と言われたものが実際多い。
感性や直感を信じたからこそ、成功した製品は世の中に多くあります。
絶対にぶれないビジョン=美意識が求められる時代
今の日本社会の閉塞感は、行き先が見えないまま進んでいることにある、と著者は指摘します。
今こそ、会社に行き先、すなわち「ビジョン」が必要なのではないかということです。
ビジョンはぶれてはいけません。
明確な将来像は、その会社に関わる全ての人を、その方向に導きます。
その絶対的な価値は「真善美」が求められ、まさしく個々人の「美意識」が求められる、というわけです。
ぶれない美意識を持つためにも、アートに触れるべきという主張です。
経営者はアートとサイエンスのイイトコどりをすべき
まさしく、冒頭で紹介した自分のエントリーで言いたかったことが、全て書かれていました…。
デザイナーはほぼ確実に自分の中で絶対的な価値観、まさしく美意識を持っています。
ベンチャー企業に限らず、経営者はもっとデザイナーにアドバイスを求めるべきです。
著者も論理的思考やサイエンスを否定しているのではなく、サイエンスを重視した上で、アートとサイエンスのいいとこ取りをするべき、という主張です。
デザイナーがアートを担い、コンサルタントがサイエンスを担い、それぞれのいいところを経営者が判断し、取捨選択する。
このような経営こそ、今の時代に求められているのではないでしょうか。