「日本デザインセンター」という会社をご存知ですか。
(参考リンク:http://www.ndc.co.jp)
この名前だけ聞くと、国がやっている商標登録審査系の団体かと思われるかもしれませんが、広告制作のプロダクションです。
日本のデザインを牽引してきた、グラフィックデザインはこの会社が基礎を作ったと言っても過言ではありません。
主なクライアントはアサヒビールやTOYOTA、AGFといった大手企業。
最近では日本郵便の商業施設「KITTE」や、ダイハツの各種デザイン、レクサスのカタログなどを手がけています。
あのJRのマークも、日本デザインセンター作品です。
その会社が編集した『デザインのポリローグ 日本デザインセンターの50年』という本を読了しました。
タイトルの通り、日本デザインセンターに関係する人材による対話集と、これまでの作品が掲載されています。
目次
日本デザインセンターは、日本デザインの基礎
日本デザインセンターは、1959年に設立されました。この年はフジテレビが放送を開始したり、東京オリンピックの開催が決まった年です。まだデザインという概念もまだまだ定着していない中、これからはデザインの時代だと、デザインの重要性を説いていたということです。
そんな最先端の視点を持った、亀倉雄策、原弘、田中一光といった面々が、立ち上げました。
デザインに関心が薄い人でも、NTTのマークや、昔の明治製菓のロゴはご存知の方も多いでしょう。亀倉雄策の作品です。
あとは東京オリンピックのポスターやマークも亀倉作品。田中一光はLOFTのマークや、無印良品の発起人でもあります。原弘はフジネットワークのマークや、紙というメディアを重視し、「フロッケン」などの紙の開発者でもあります。
この人たちが日本のグラフィックデザインの基礎を作り上げたのです。
対話でデザインを考える
デザイン本は、通常作品が掲載されていて、それがどのような理屈で制作されたかという説明で終わります。
資料としてはそれで十二分です。
ただ、この本は対話ということもあって、どのような人が、どのような考えを持ちながら、デザインという仕事をしていたかわかります。
それを読み解くことによって、今後のデザインはどうあるべきか、広告宣伝はどうあるべきか、考えさせられます。
ロゴやマークは、その理念が大事だと言われています。私もロゴやマークの仕事をするときは、そのことを常に念頭に置きながら仕事します。
ただ、理屈抜きにして、いかにして人に愛されるものを創るかということも、絶対に忘れてはなりません。そのことを改めて思い起こさせる本でした。一目見てカッコいいと思われるパッケージや、分かりやすいマークやロゴは、長年にわたって愛されるものです。その上で、理念と言う説得力を持たせることに寄って、強力なシンボルとなり、会社の原動力にすることが出来るのです。
歴史でデザインを考える
歴史を知るということは大切なことだな、と最近思います。
賢者は歴史に学ぶといいますが、以前はその理由が分かりませんでした。やはり、歴史は繰り返します。
日本デザインセンターが出来た1959年に東京オリンピックが決まり、昨年2013年に東京オリンピックが決まりました。
これから、オリンピックに向けた具体的なモノやコトが決まり、出現することでしょう。
どのようなモノが出来上がるのか、今から楽しみです。
その際、過去の人間はどのような考えで東京オリンピックのデザインを支えたのかということも、知っておく必要があると思います。
デザインは急に出来上がった物ではなく、先述のような偉大なデザイナーが概念を作り上げ、それを現代まで発展させてきたのです。
先日、美術大学に務める知人から、こんなことを聞きました。
「最近の学生は、昔の作品とか、デザイナーとか知らないんだよね。アーティストじゃないんだから、同業者のことを知ることは大事でしょ。」
これまでのロゴや、広告は誰がデザインをしたのか、どういった考えで創られたのかということに、関心が薄いと言います。
その割に、学園祭で有名なデザイナーが来ると、まるで歌手が来たかのように喜ぶと。
デザイナーになろうとしている人は、その職に就いた瞬間、その有名デザイナーがライバルになります。そのことを忘れてしまっているようです。
有名人に敢えて嬉しい気持ちは凄く分かります。
その気持ちは分かりますが、同時に「自分がより良くするんだ」という気概がないとダメだと思います。
最先端を大事にしつつ惑わされない
日本デザインセンターが出来た当初とは違い、経済環境も変化し、メディアも変化しました。しかしながら、人間そのものの考え方や、「良い物は良い」と思えること自体は、変わっていないはずです。最先端の情報をしっかりと捉えつつ、人の心に残るような根源的なものは何かを、今、改めて考える必要に迫られていると思います。
改めてデザインのことを知りたい人、デザイナーとして色々な考えに触れたい人、単に資料集として閲覧したい人。
全てのデザインに関わる人にお薦めしたい本です。