東京オリンピックのエンブレムが、4案の最終候補案のA案「組市松紋」に正式に決定しましたね。
・新五輪エンブレムに「組市松紋」のA案 宮田委員長「エンブレム愛して」(THE PAGE)
・【中継録画】新しい東京五輪エンブレムにA案 宮田委員長と王貞治氏が発表(THE PAGE)
また、今回は前回の反映を踏まえたのか、4案に寄せられた意見についても公表されています。
・東京2020大会エンブレム最終候補作品に関する ご意見集約レポート(PDF・東京2020組織委員会)
早速さまざまな意見が噴出していますが、もう決まった事なので、このエンブレムをオリンピックに向けてしっかりと効果的に使って行き、親しむことが大切なのではないかと思います。
今回、採用されたA案をデザインした野老朝雄(ところ・あさお)さんについては、Fashionsnap.comなどがまとめています。
・新・東京五輪エンブレムデザイナー野老朝雄とは?制作の裏側を探る(Fashionsnap.com)
建物のファサードなどを手がけられて、紋と紋様の専門家みたいな感じでしょうか(これから仕事増えまくるんでしょうなぁ、いいなぁ)。
さて、(今後何も無ければ)東京オリンピックのエンブレム問題については一件落着といったところですが、改めて、今回ほどデザイン・ロゴ・デザイナーについて注目を集める事件は無かったと思うのです。自戒を込めて、今回の一件はしっかりと覚えておいて、果たしてデザイナーやデザインが社会の発展にどのようにして寄与できるのか、しっかりと考えていく必要はあると思います。
目次
『だからデザイナーは炎上する』を読みました
そんな意味を込めて、『だからデザイナーは炎上する』 (藤本貴之 著/中公新書ラクレ)を読みました。
視点がしっかりとしていて、デザイナーは一回読んでおいた方が良い本だと思います。
今回のエンブレム問題は、デザイナー界隈の体質の古さにあるといい、その理由を述べていますが、たしかに腑に落ちる説明がなされています。
またこの問題は、「パクリ」が火種の主な原因だったのは記憶に新しいと思います。
しかしながら、デザインや創作活動は、何かの模倣や元ネタが必ずあると言っても過言ではありません。その上で、オリジナリティをどのようにして出すかが、プロとしての仕事なのですが、この本では、「パクリ」と一言でまとめられてしまうようなものを、「複製」「盗作」「オマージュ」などに分類し、「許されるパクリ」「許されないパクリ」としてまとめています。
また、前回のエンブレムは大変わかりにくかったと筆者は言います。確かに、インクルーシブだのダイバーシティだの、分かるための説明が分かりにくい言葉であふれていたように感じます。
インターネット時代は、スピードが命なため「直感的に理解させるデザイン」が出来るかどうかが、今後デザイナーとして生き残れるかどうか、とも言っています。
広告やデザインは基本見られていない
仕事がら、広告やCMは見るようにしていますが、渋谷のように広告だらけのところに行くと、基本的には広告なんて見ませんよね?見たとしても一瞬、数秒の世界だと思います。
その中で、しっかりと記憶に残ったり、「かっこいい」「かっこわるい」といった判断を下されるわけですから、やはり直感的にわかりやすいデザインというのは、今後求められるのでしょう。
しかし、「そこに込めた意味」の説明は必要なのではないか
説明不要で、直感的に分かりやすいデザインは今後必要になってくると思います。ただ、そもそもデザインは「複雑な物事を、分かりやすくする」という使命があるので、「直感的に分かりやすいデザイン」というのは本末転倒な気さえします。
しかしながら、会社・組織・団体が出すデザイン、ロゴについては、ある程度の説明は必要なのではないかと思います。もちろん、直感的にカッコいい、分かりやすいデザインを心がけた上で、「ここはこういう意味があり、ここはこういう意味でこの数にしてあります」といったような、デザインの説明は、会社の内部にとっても外部にとっても、その会社を知る事に繋がるのではないでしょうか。
今後、その会社のお世話になりたい人、お世話になっている人が、その会社がどういうことを考えて、世の中に発信しているのかという事は、大切な情報だと思います。
デザイン自体にくどくど説明するのは避けた上で、そのデザインに含んでいる意思・姿勢は、しっかりと言葉として発信する事が大切なのではないかなと、一デザイナーとして思うのでありました。