ハイソラ

巷にある「手戻りの対策」は、デザインには全くアテになりません

WORK

皆さんも「このプロジェクトは自分でもうまくできたな」と思える仕事はいくつかお持ちだと思います。
私もあります。

以前ご一緒した方とのプロジェクトは、本当にスムーズにいきました。
名前は鈴木さんとしておきましょう。
鈴木さんは決断も連絡も早く、議論も的確かつ真剣に行われ、何より相手をリスペクトして進めてくれる人で、いつも以上の力を発揮できました。もちろん、プロジェクト自体も無事に完了し、喜んでいただけました。

今回、鈴木さんが参加しているグループから、お仕事のご依頼がありました。
仕事を引き受ける際は、「モンスタークライアントかどうか」という私なりの基準を持っていますので、そこに当てはめて判断をするようにしています。

特にそれには当てはまりませんでしたし、鈴木さんも中核メンバーにいることもあり、特に何の疑問も持たずプロジェクトを引き受けました。

しかし、どんどんプロジェクトがひどい方向に向かうことになります。
一番最初に違和感を覚えたのは、最初に打ち合わせをした後のことでした。

連絡頻度がまばらだった

窓口になってくれた人は、上記の人とは別の人なのですが、この人の連絡頻度がまばら過ぎたのです。
10分でメールの返信がくることもあれば、30日経っても来ないこともありました。
その間、別の人が代役として返信をしてくれたりもしましたが、連携がなされていないせいか、意思疎通がうまくいかないのです。

「これはやばいかもしれない。」

私の直感が訴えてきました。
いい仕事ができないかもしれない、途中で嫌になってしまう可能性がある…私の中でネガティブな思考がめぐります。
ただ、これは単に私のわがままです。
忍耐強く仕事をこなそうと、気合いを入れ直しました。

手戻りが続く地獄

しかし、その予感は当たってしまいます。
その後、連絡は相変わらず取れたり取れなかったりし、提案をしても跳ね返され全く意見は通らず、密なコミュニケーションをしたいのに忙しいという理由で断られ、やっとの思いで「これでいきましょう!」と納得いただいて進めた作業が途中で半分変更され、その半分も結局変更され、今度は企画とは全く異なる機能が要求され…という、「手戻りの手戻りでスタート地点に戻る」という仕事になってしまいました。

ネットでよく目にする対策

手戻りが続くのは、これまで手間暇をかけてきた仕事を全部破棄することになります。
都度見積もりはしましたが、さすがにこの状況が続くのは参ってしまいます。
先人たちの知恵を借りようとネットで検索をしました。
すると、どの検索結果も全く役に立たないものでした。

まずよく目にした意見。

手戻りが発生するのは、相手の納得感が足りないせい。密なコミュニケーションをとりましょう。

そもそも密なコミュニケーションを取ろうにも、上記のように連絡がうまくいかないこともあるのです。

そして、この意見も目にしました。

提案の頻度を細かくして、手戻りが仮に発生してもリスクを最小限にする。

デザインの場合、この対策はアテになりません。
いくらこちらが頑張っても、絶対に納得しない、そもそも意見が合わない人もいますし、デザインという全員が一定の判断材料を持っているような仕事の場合は、必ず好き嫌いが出ます。

デザインを好き嫌いで判断してしまう人が少なからずいる

その好き嫌いで全てを判断してしまう人が、少なからずいることを忘れてはいけません。
そのような人には、「好き嫌いではなく、このプロジェクトの成功のためにはこれをこうした方がいい」という説明も意味をなしません。
一晩寝たら全く違う意見になっている場合もあります。
いわゆる「気まぐれで仕事をするタイプの人」ということになってしまうのですが、このような人との仕事は確実にうまくいきません。

お金をいただいている以上、相手の意見はある程度聞くべきですし、デザインは何よりも「相手がどうしたいか、どうなりたいか」という視点が大前提ですので、そこは重要にすべき。
しかしながら、それ以外の部分、例えばメールのやり取りや連絡、プロジェクトの進捗といったことにまで振り回される必要はないのです。

自分に非がないと辛い

ここ最近は先述した「モンスタークライアントの可能性があるリスト」に当てはめて仕事をしていますので、あまりこのようなことには遭わずに仕事ができていたのですが、今回は読みが甘かった。
仕事がうまくいかない時「次はこうしよう」という反省は必ずすると思いますが、どう反省しても今回ばかりは自分に非がないのです。
特に今回は合意形成が何度も行われていたにも関わらず、「やっぱりこうして」という気まぐれさが全体を覆っているところがまずい。

このような仕事は本当にきついです。
自分に非がある場合は、それを正せばことが進んだり、うまい方向に進みますが、相手に非がある場合は、その相手の改善を期待するしかできません。
そしてその期待が叶うことはほぼありません。
そうなると、相手のいいところを何とかして見出し、「仏の心で仕事をする」しか方法は残されていません。

フリーランスは真面目に仕事をするしかない

私の性格上、「理不尽な目に逢う」ということは何が何でも避けたいので、組織には属さずに仕事をしているのですが、いくらフリーランスでもそのような目には必ず逢ってしまいます。
「フリーランスも気まぐれで仕事をする人が多いじゃん」という意見もよく聞きますし、現にそういう人がいるからこそ、フリーランスに対して適当にあしらう人がいることも事実です。

そのような意見をなくすためには、若手のフリーランスが真面目にコツコツと仕事を積み上げていくしかできないと思います。
真面目に毎日、頑張って仕事をするしか対策はないのではないかな、と諦めに似た心境です。