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フリーランスのデザイナーの目線で、色々なことを考えるブログ

仕事とは何かを改めて考えさせられた『PIXAR 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』

時としてクリエイティブな物事は「お金を無視する」ことが多いにあります。
採算を度外視して作り込み、コストだけかさみそれを回収することができなかった、という話は業界を問わずよく聞きます。
しかしながら、何か物事を始めたり、作ったりする時には「お金」が絶対に必要になります。
この当たり前な事実を、クリエイティブに携わる人は忘れがちになります。
会議室では、「そのアイディアは実現できないですよ、そこまでお金ないですよ」「だったらお金を集めてくればいいでしょ」という会話が普通に聞かれます。
こういった会話がなされ、いつまでたっても終わらない会議になってしまうのは、どちら側も、相手に対して敬意が足りないせいです。
相手に一定の敬意を払うべきであるということは、これも当たり前の話ですが、日々仕事をしていると忘れがち。
「お金」と「クリエイティブ」、どちらも大切なのです。

「PIXAR 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話」の表紙

こういったお金とクリエイティブの両面からきちっと語られている本が『PIXAR 〈ピクサー〉 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』(ローレンス・レビー (著), 井口耕二 (翻訳))です。
これまで出版されているピクサー関連書籍は、どちらかというとそのアイディアの出し方にフォーカスされた本ばかりでしたが、本書は違って「お金」の視点で書かれています。
翻訳もクセがなく、本文から漂う雰囲気も穏やかで、そこそこ厚みのある本ですがあっという間に読めます。
いい本でした。

「PIXAR 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話」の厚さ

筆者はもともと弁護士でしたが、経営者となり、ジョブズに誘われる形でCFOとして会社に招き入れられ、当時まだ未公開だった「トイ・ストーリー」を試写会で見て衝撃を受けます。
この会社を潰すわけにはいかない、アイディアの火を消すわけにはいかないと奮闘する物語。
物語といっても、もちろんノンフィクション。

ピクサーの前提を知った上で読むとなお良し

ピクサーは、今や誰もが知っているスタジオですが、ピクサーが会社を興したばかりの時期が語られています。
もともとピクサーはCG制作用のコンピューターメーカーとして事業を始めています。
しかし売り上げは芳しくなく、PRとして作られたのが「ルクソーJr.」です。
ピクサーのロゴで有名なあの電気スタンドの映像です。

これが評価を受け、1986年のアカデミー短編アニメ賞にノミネートされますが、その後もあまり業績はパッとしません。
…という前提を知った上で本書を読むと、本当に感慨深い気持ちでいっぱいになります。

「PIXAR 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話」の表紙

どのようにして潰れそうな会社を軌道に乗せ株式公開まで果たすのか、CFOの視点から細かく書かれています。
そして契約書がいかに大切か、弁護士の視点からも描かれます。
またジョブズがポケットマネーから出資をしていた話、ディズニーとの不都合な契約やマーケティング力の凄まじさも垣間見ることができます。
会社に入ったばかりの時、社内政治に巻き込まれてしまう話も生々しい。

仕事とプライベートを切り離して考えるのはダメだ

この本を読み終え、最初に思ったことは、やはり仕事と生活、自分は切り離して考えてはいけないと言うこと。
著者のローレンス・レビー氏は、今は経営の一線からは退き、東洋哲学や瞑想と現代社会の関係性を研究しています。
なるほど納得。

働き改革が語られ、いかにして仕事を効率的に行うかという視点ばかりですが、決してそうではない。
仕事を「いかにして、自分が持っている価値を社会に還元させるか」という大切な視点がガッツリと抜けています。
「お金儲けは悪いことではない」「プライベートを大切にする」といった言葉をよく耳にしますが、確かに正論です。
しかしそれはあくまでも、自分の価値を分かった上で社会に還元し、貢献するのか考えた上で考えねばならないと思います。
そうすると、全てが断絶しているのではなく真逆で、全て連綿と続いているものだと気付かされるはずです。

「仕事もプライベートも大事」なのではなく、「一人の人間が為すこと」として「自分を大切にする」ことなのだと、改めて気付かせてくれました。
久しぶりに心からおすすめできる本でした。

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